【葉月の語源】夏の終わりに秋を感じる? 旧暦と和文化に秘められた8月の別名

 

葉月(はづき)とは?旧暦に由来する日本の美しい月名


8月には「葉月(はづき)」という古くからの美しい異名があります。この葉月は、もともと旧暦の8月を指す言葉ですが、今でも新暦の8月の異名として親しまれています。

この記事では、葉月の語源を深掘りし、その背景にある旧暦の豊かな季節感、そして日本の自然観や言葉の変遷に秘められた奥深い文化と歴史を解き明かしていきます。




葉月の語源は複数!有力な3つの説を徹底解説


葉月の語源については諸説あり、その由来は明確には定まっていません。しかし、古の自然現象や人々の生活様式を反映したいくつかの有力な説が存在します。主な説は以下の3つです。

  1. 葉落ち月(はおちづき)

  2. 穂張り月(ほはりづき)

  3. 初来月(はつきづき)

それぞれ詳しく見ていきましょう。


1. 「葉落ち月」説:旧暦8月は紅葉の季節?


「葉落ち月」説は、葉月の語源として最も広く知られ、有力視されています。

「葉落ち月(はおちづき)」とは、その名の通り、色づき始めた木の葉がやがて落ち始める月という意味です。この「葉落ち月」が転じて「葉月」になったという説です。

「夏真っ盛りの8月に葉が落ち始めるのはなぜ?」と思う方もいるかもしれません。それは、旧暦の8月が現在の9月上旬から10月上旬頃にあたり、季節のずれがあるからです。旧暦の季節感と「葉」という文字が使われていることから、この説は特に信憑性が高いとされています。


2. 「穂張り月」説:実りの秋への期待を込めて


「穂張り月(ほはりづき)」が転じたという説は、稲穂が膨らみ、実りの時期を迎えることから名付けられたとされています。

古来より日本は稲作を基盤とした農耕社会であったことを踏まえると、稲の成長が月の名称に影響を与えるのはごく自然なことです。この「穂張り月」は、農耕社会における季節の捉え方、特に豊かな収穫への期待感を反映していると考えることができます。


3. 「初来月」説:渡り鳥が告げる秋の訪れ


「初来月(はつきづき)」説は、初めて雁(がん)が日本に渡ってくる月であることから、この「初来月」が略されて「葉月」になったというものです。

古来より、季節の到来を告げる指標として渡り鳥の飛来は重要視されていました。特に雁は秋を象徴する鳥であり、その初飛来が月の名前になるのは理にかなっています。


葉月以外にも!8月を彩る多様な異名たち


上記の3つの説以外にも、8月には実に多くの呼び名が存在します。



  • 南風月(はえづき):南方から台風が多く来る月であることから。

  • 月見月(つきみづき):旧暦8月15日が中秋の名月として最も月が美しい月であることから。

  • 秋風月(あきかぜつき):心地よい秋風が吹き、爽やかさが感じられる月であることから。

  • 燕去月(つばめさりつき):燕が南方へ渡っていく月であることから。

  • 雁来月(がんらいげつ): 雁が初めて渡って来る月であることから。

  • 木染月(こそめづき):木の葉が色づき始める月であることから。

  • 紅染月(こうぞめつき): 紅く染まる月であることから。

  • 草津月(くさつづき): 草が元気を取り戻す月であることから。

  • 竹春(ちくしゅん): 竹が若葉を茂らせ、春のように生き生きとする月であることから。

  • 壮月(そうげつ): 草木が盛んになり活力に満ちた月であることから。

 これらの多様な呼び名からも、当時の人々がいかに自然の移ろいを繊細に感じ取り、それを言葉に託してきたかがうかがえます。


「葉月」は当て字?和風月名と日本書紀の謎


葉月をはじめ、睦月(むつき)・如月(きさらぎ)・弥生(やよい)などの和風月名は非常に古く、日本に文字がなかった時代にまで遡る言葉である可能性が高いとされています。

日本最古の書籍である「古事記」「日本書紀」のうち、『日本書紀』には、「秋八月(ハツキ)」という記述が見られます。この『日本書紀』には、「きさらぎ」「うげつ」「さつき」といった読みも記されており、和風月名の音が古くから存在していたことがわかります。

この記述は、「ハツキ」という音が、漢字が定着する以前の古代から存在していた可能性を示唆しています。これは、音韻先行(まず音がありき)と漢字の意味付与という重要な側面を明らかにします。すなわち、漢字の「葉月」は、この古い音に後から意味を込めて当てられた**「当て字」である可能性が高い**と考えられています。

漢字の「葉」は、その音価「は」が「ハツキ」の一部に近く、かつ旧暦8月の主要な季節の特徴(例えば、葉が落ちる、あるいは葉が色づくこと)と意味的に合致したため、選ばれたと推測されます。


現代と違う!旧暦の8月が「秋」だった理由


葉月の語源を知る上で不可欠なのが、旧暦と新暦との季節感のずれを理解することです。

現代の8月が夏の盛りであるのに対し、旧暦の8月は現代の9月上旬頃から10月上旬頃に相当します。この時期は既に秋が訪れる頃でした。


二十四節気で見る旧暦の季節感


旧暦の季節感を裏付ける指標として、二十四節気が挙げられます。

  • 旧暦8月の始まりに当たる新暦の8月7日頃には**立秋(りっしゅう)**を迎え、この立秋から暦の上では秋が始まります。

  • さらに、8月22日頃には**処暑(しょしょ)**を迎え、暑さが和らぎ、少しずつ秋の気配が深まる時期であることを示しています。

これらの節気は、旧暦における8月が明確に秋の範疇にあったことを示しているのです。


現代の季節感とのギャップ


月の異名が旧暦の季節感によく合っているという考えがある一方で、師走(しわす)や睦月のように、現在の新暦の行事や季節感に合っているという考えもあります。

特に現代では温暖化の影響で季節感が大きく変化する中で、月の異名を「旧暦の月名」と言い切ることも難しくなっています。これは、現代社会において失われつつある自然との関わりの希薄化という課題をも浮き彫りにしていると言えるでしょう。


まとめ:葉月が教えてくれる日本の豊かな自然観


8月の異名「葉月」の語源を考察してきました。語源の最有力とされている「葉落ち月」が転じたという説の他、多くの説や月の呼び名が、現在の新暦8月の季節感との違和感を感じさせます。これは、やはり新暦と旧暦との季節感の大きなずれがあるためです。

また、日本最古の書籍の一つである『日本書紀』に既に「ハツキ」という音が見られることから、葉月という漢字はすでにあった音に意味を込めた「当て字」であったことを示しています。

「葉月」の語源を考察することで、古の人々がいかに自然の移ろいを繊細に感じ取り、それを言葉に託してきたかを再認識することにつながります。私たち現代人も、自然との関わりが薄れつつあることを認識し、日本の豊かな自然観や言葉の持つ奥深さに改めて目を向けていきたいですね。


いかがでしたか?今回は8月の異名「葉月」の語源について考察しました。

最後までお読みいただきありがとうございました。








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